第4章
パッシブサポートへ移行する姿勢③
反り腰(Lumbar Lordotic Posture)
反り腰はSNSでも非常に有名です。
しかし説明は、
- 腸腰筋が硬い
- 腹筋が弱い
- 骨盤前傾
ここで終わっています。
しかし、
それでは
なぜ反り腰になるのか
説明できません。
反り腰は結果である
まず理解したいのは
腰は勝手に反れません。
必ず
身体全体で
反る理由があります。
例えば
重心が前へ行く。
すると
人は倒れます。
これを止める方法は
二つあります。
①腹筋を使う
または
②腰を反る
です。
脳は
どちらが楽でしょう。
もちろん
②です。
筋肉を使わなくて済むからです。
腰を反ると何が起きるか
ここが重要です。
腰椎は
後ろへ反ると
椎間関節同士が近づきます。
正常では
筋肉が
ブレーキになります。
しかし
反り続けると
筋肉ではなく
骨同士が当たり始めます。
つまり
筋肉
↓
骨
へ支持が変わります。
さらに
椎間関節包も張ります。
つまり
Passive Supportです。
前縦靱帯はどうなるのか
ここで
前縦靱帯(Anterior Longitudinal Ligament)
が出てきます。
前縦靱帯は
脊柱前面を覆う
非常に強い靱帯です。
役割は
過伸展を止めること。
つまり
腰を反るほど
前縦靱帯は張ります。
すると
脊柱起立筋は
少し休めます。
ここでも
筋肉から
靱帯へ
役割が移っています。
腸腰筋は本当に硬いのか
これは臨床で
最も議論になるところです。
患者さんを見ると
確かに
Thomas Testでは
短縮しています。
しかし
ここで考えたいことがあります。
短縮=収縮
ではありません。
長期間
骨盤前傾位になると
腸腰筋は
その長さに適応します。
つまり
構造的短縮です。
さらに
腸腰筋が
姿勢保持筋として働かなくなると
代わりに
腸骨大腿靱帯や
関節包へ
荷重が乗ります。
つまり
「腸腰筋が頑張っている」
ではなく
「腸腰筋も休み始めている」
患者も少なくありません。
反り腰なのに腰が張る理由
患者さんは言います。
「腰がパンパンです。」
しかし
ここで
EMGを見ると
思ったほど
起立筋活動は高くありません。
では
なぜ張るのでしょう。
答えは
代償です。
本来
多裂筋
腹横筋
横隔膜
骨盤底筋
が作る
インナーユニットが
働くべきです。
しかし
これらが働かない。
すると
外側ユニット
例えば
- 最長筋
- 腸肋筋
- 腰方形筋
などが
代償します。
つまり
張っているのは
腰全体ではなく
表層筋だけです。
深層は
逆に活動低下しています。
椎間関節症はなぜ起きるのか
ここが
反り腰最大の問題です。
腰椎伸展では
椎間関節へ
圧縮力が増えます。
短時間なら問題ありません。
しかし
一日中
この状態が続くと
関節軟骨
↓
関節包
↓
滑膜
へ
負担が蓄積します。
すると
炎症
↓
疼痛
↓
さらに筋活動抑制
になります。
脊柱管狭窄症との関係
さらに重要なのが
ここです。
反り腰では
椎間関節が近づきます。
すると
黄色靱帯は
内側へたわみます。
椎間板も
少し後方へ押されます。
つまり
脊柱管は
さらに狭くなります。
だから
脊柱管狭窄症は
立位
歩行
伸展
で悪化します。
逆に
前屈すると
楽になります。
ここで
前回の記事の
「立位腰痛」
につながります。
反り腰の人が腹筋を鍛えても治らない理由
ここも臨床では非常に重要です。
「腹筋が弱いから腹筋運動をしましょう」
これだけでは、多くの慢性反り腰は改善しません。
なぜなら、問題は腹筋の筋力だけではなく、
脳が”腰を反ってパッシブサポートで立つ”という運動戦略を学習していることだからです。
この状態では、
- 腹筋を鍛えても立位では使われない
- 多裂筋を鍛えても姿勢では参加しない
- 起立筋だけが代償し続ける
ということが起こります。
つまり必要なのは筋力トレーニングだけでなく、
**「立位でインナーユニットが自然に参加する運動学習(Motor Learning)」**です。
私が臨床で最も重要だと思っていること
ここまで読むと、
「パッシブサポートは悪者なのか?」
と思うかもしれません。
実は違います。
パッシブサポート自体は、人間が長時間立つために必要な仕組みです。
問題は、
依存しすぎることです。
本来は、
- 動き始めは筋肉(Active)
- 静止中は適度にPassive
- また動けばActive
というバランスが理想です。
しかし慢性腰痛の患者さんでは、
ほぼ一日中Passiveへ依存し、動き始めても筋肉が適切に参加できない状態になっていることがあります。
次回予告
次回はいよいよ**膝過伸展(Genu Recurvatum)**です。
実は膝過伸展は、**人体で最も分かりやすく「アクティブサポートからパッシブサポートへ切り替わる現象」**です。
なぜ大腿四頭筋を使わずに立てるのか。
なぜACL・PCL・後方関節包が荷重を受けるのか。
そして、それが股関節・骨盤・足部の姿勢までどう連鎖するのかを掘り下げていきます。




