2026.07.22

第14章

臨床で私は何を見ているのか

「痛い場所」を診るのではなく「戦略」を診る

新人の頃、

私は

患者さんに

こう聞いていました。

「どこが痛いですか?」

患者さんは

「腰です。」

「肩です。」

「膝です。」

と答えます。

私は

その場所を触り、

硬い筋肉を緩め、

痛い関節を動かしていました。

もちろん、

その場では楽になります。

でも、

数日すると戻ってしまう患者さんが少なくありませんでした。


私が間違えていたこと

今思えば、

私は

「結果」

を治療していました。

しかし、

痛い場所は

原因ではなく、

結果

であることが多いのです。

例えば

肩こり。

肩が悪いとは限りません。

腰痛。

腰が悪いとは限りません。

膝痛。

膝だけが悪いとは限りません。


私が最初に見るもの

今、

患者さんが歩いて入ってくると、

私は最初に

痛みではなく、

重力

を見ます。

重力は

その人の身体を

どこへ落とそうとしているのか。

そして

その人は

どこで支えているのか。


例えば

頭が前へあります。

すると

普通は

首の筋肉で支えます。

でも

長期間になると

筋肉は疲れます。

そこで

身体は

項靱帯へ

荷重を逃がします。

つまり

筋肉から

Passive Supportへ

移行します。


この考え方は全身で同じ

私は

身体を

上から順番に見ます。

頭部

頭は

どこにあるか。

耳は

肩の上にあるか。

それとも

前へ出ているか。


胸郭

肋骨は

開いているか。

閉じているか。

呼吸で

動いているか。


骨盤

前傾か。

後傾か。

ではありません。

私は

骨盤が

自由に動けるか

を見ます。


股関節

伸びるか。

回るか。

荷重を受けられるか。


ロックしているか。

常に曲がっているか。


母趾は

接地しているか。

アーチは

潰れているか。

足趾は

働いているか。


私が探しているもの

私は

筋肉ではなく

荷重の逃げ道

を探しています。

例えば

この人は

腰椎で

止めている。

この人は

股関節で

止めている。

この人は

膝を反張させて

止めている。

この人は

足底腱膜へ

逃がしている。

つまり

身体は

一番楽な場所へ

荷重を逃がしています。


痛みは教えてくれる

ここで

面白いことがあります。

患者さんが

「ここが痛い。」

と言う場所は、

身体が

一番頑張っている場所

ではないことがあります。

むしろ

一番頑張らされている場所

です。

だから

私は

痛みを

敵ではなく

ヒント

として考えています。


例えば腰痛

腰が痛い。

昔の私は

腰だけを見ました。

今は

違います。

私は

まず

股関節を見ます。

足部を見ます。

胸郭を見ます。

呼吸を見ます。

そして

最後に

腰を見ます。

なぜなら

腰は

「代償」

になっていることが

非常に多いからです。


例えば肩こり

肩が硬い。

だから

肩をほぐす。

もちろん

それも必要です。

しかし

私は

肩を見る前に

呼吸を見ます。

胸郭を見ます。

頭の位置を見ます。

骨盤を見ます。

なぜなら

肩は

姿勢戦略の

最終結果であることが

少なくないからです。


私が考える評価の順番

ここまでの理論を

臨床へ落とし込むと、

私は

次の順番で評価しています。

① 呼吸はどうか。

② 腹圧は作れているか。

③ 重心はどこへ落ちているか。

④ Active Supportで支えているか。

⑤ Passive Supportへ逃げている場所はどこか。

⑥ その結果、

どこへ負担が集中しているか。

⑦ 痛みはどこに出ているか。

この順番です。


治療も逆の順番

ここが

とても重要です。

私は

痛みから治療を始めません。

まず

安心。

呼吸。

荷重。

感覚入力。

運動学習。

最後に

筋力。

この順番です。

もちろん、

炎症が強い急性期や外傷では、まず痛みや炎症をコントロールすることが優先される場合もあります。

しかし慢性痛では、「安全に動ける」という感覚を取り戻すことが、その後の運動療法を成功させる土台になると私は考えています。


ここで、あかつき鍼灸整骨院の考え方につながる

私は

これまで何度も

患者さんへ

こう説明してきました。

硬い筋肉は緩める。

しかし、

それだけでは終わりません。

緩めるだけでは、

身体はまた

同じ戦略へ戻ります。

だから、

弱くなった筋肉には運動療法を行う。

これは

単に筋力を付けるためではありません。

脳に新しい姿勢戦略を学習してもらうためです。

この考え方が、

私たちが「硬い筋肉は緩め、弱い筋肉は運動療法で改善する」という方針を大切にしている理由です。


そして、この本のタイトルの意味

ここまで読んでくださった方なら、

最初のタイトルの意味が

少し変わって見えるかもしれません。

私は最初、

Active SupportからPassive Supportへの依存

というテーマで書き始めました。

でも今なら、

こう言い換えます。

「姿勢とは、重力に対する脳の戦略である。」

筋肉も、

靱帯も、

筋膜も、

呼吸も、

痛みも、

すべては

その戦略の一部です。

そして治療とは、

壊れた身体を修理することではなく、

より効率的で、安全な戦略を脳と身体がもう一度学び直す手助けをすることなのだと、私は考えています。