2026.08.25

筋肉がつるのはなぜ?「水分不足だけ」ではない筋けいれんの仕組みを詳しく解説

ふくらはぎの筋肉がつる原因と筋けいれんの仕組みを表したイラスト

筋肉が「つる」とはどういう状態?

筋肉は通常、

縮む → 緩む → 縮む → 緩む

を繰り返しています。

例えば歩くときも、ふくらはぎがずっと縮み続けているわけではありません。必要なタイミングで収縮し、その後は適切に力を抜いています。

ところが筋けいれんでは、

筋肉を動かす運動神経が異常に興奮

多数の筋線維が強く収縮

収縮がなかなか止まらない

硬く盛り上がり、強い痛みが出る

という状態になります。

運動に伴う筋けいれんは、一般に突然起こる、痛みを伴う不随意な骨格筋の収縮とされています。


なぜ筋肉は勝手に収縮してしまうのか?

ここからが重要です。

筋肉は、自分だけで勝手に収縮を始めているわけではありません。

脳・脊髄から運動神経を通して信号が伝わり、筋肉が収縮します。

大まかには、

脳・脊髄

α運動ニューロン

末梢神経

筋肉

収縮

という仕組みです。

そして筋肉からも、現在の筋肉の長さや張力などの情報が神経系へ送り返されています。

ここで筋けいれんを理解するうえで重要になるのが、

筋紡錘(きんぼうすい)

ゴルジ腱器官

です。


筋紡錘は「筋肉の長さ」を監視するセンサー

筋紡錘は筋肉の中にあり、筋の長さやその変化を感知します。

筋肉が急に伸ばされると、

「筋肉が伸ばされた!」

という情報を神経系へ送ります。

すると反射的にその筋肉を収縮させる方向へ働きます。

膝蓋腱反射で膝の下を叩くと脚が動くのも、このような伸張反射の仕組みが関係しています。


ゴルジ腱器官は「筋肉にかかる張力」を感知する

一方、筋と腱の境界付近にはゴルジ腱器官があります。

こちらは筋・腱に加わる張力の情報を神経系へ伝えます。

筋肉には、

収縮させる方向の入力

だけでなく、

過剰な収縮を抑える方向の入力

も存在しているわけです。

正常な運動では、こうした興奮と抑制が複雑に調整されることで、必要な強さの筋収縮を作っています。


筋肉が疲労すると、このバランスが崩れる可能性がある

運動に伴う筋けいれんについて有力視されている考え方の一つが、**Altered Neuromuscular Control(神経筋制御の変化)**です。

筋肉を長時間・高強度で使う

神経筋疲労が起こる

筋紡錘などからの興奮性入力と、ゴルジ腱器官などを介した抑制性入力のバランスが変化

α運動ニューロンが過剰に興奮しやすくなる

筋肉への収縮信号が続く

筋けいれん

という仮説です。

つまり筋肉がつる現象を、

「筋肉が硬いから」

だけで考えるのではなく、

「筋肉を制御している神経系まで含めた問題」

として考えるわけです。


なぜ「疲れたとき」につりやすいの?

この理論を知ると、

サッカーの試合終盤にふくらはぎがつる

マラソン後半で太ももがつる

といった現象も理解しやすくなります。

実際、運動関連筋けいれんは、疲労が大きくなる競技後半に起こりやすいことなどから、単純な脱水だけでなく神経筋疲労の関与が考えられています。

これは以前お話しした**「負荷と身体の許容量」**ともつながります。

普段なら耐えられる負荷でも、

運動時間が長くなる

疲労が蓄積する

その時点で維持できる能力が低下する

神経筋制御も乱れやすくなる

ということがあります。

だから、つる人に対して、

「水を飲んでください」

だけでは不十分な場合があります。


「水分不足・電解質不足でつる」は間違い?

完全な間違いではありません。

ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどは、神経や筋肉が正常に活動するために重要な電解質です。

大量発汗、嘔吐、下痢などによって水分・電解質バランスが大きく崩れれば、筋けいれんに関係する可能性があります。

ただし、

「運動中につった=水分不足」

とは限りません。

運動関連筋けいれんについては、脱水・電解質異常だけでは説明できない研究結果が多くあり、現在は複数の要因が関係する現象として捉えることが重要です。

例えば、脱水は全身的に起こるのに、実際の筋けいれんはよく使っている筋肉に局所的に起こりやすいという点も、単純な脱水説だけでは説明しにくい部分です。


「筋肉が短い状態」でつりやすいのも重要

これも知っておくと面白いところです。

筋けいれんは、筋肉が短縮した状態で強く収縮したときに起こりやすいと考えられています。

例えばふくらはぎ。

ふくらはぎの筋肉は足首を、

つま先立ちする方向=底屈

へ動かします。

寝ているときにつま先が下へ向いた状態になると、ふくらはぎは短くなります。

そこから強く収縮すると、

「あっ、つった!」

となることがあります。

そして反対に、

つま先を身体側へ起こす

とふくらはぎが伸ばされます。

これが「つったらストレッチすると楽になる」理由の一つです。


なぜストレッチすると治まりやすいの?

急性の運動関連筋けいれんでは、ゆっくり静的に筋肉を伸ばすことが推奨されています。

例えばふくらはぎなら、

膝を伸ばす

足首をゆっくり背屈させる

ことで筋肉を伸ばします。

すると、持続していた異常な筋活動を抑える方向に作用し、けいれんが治まりやすくなると考えられています。

ただし、

ストレッチでその場のけいれんが治る

ことと、

普段からストレッチしておけば絶対につらなくなる

ことは別です。

予防としてのストレッチについては、研究結果が一貫しているわけではありません。


高齢者が夜中につりやすいのはなぜ?

ここは運動中の筋けいれんとは分けて考える必要があります。

夜間のこむら返りは高齢者にもよくみられますが、原因が一つに決まるわけではありません。

例えば、

筋肉・神経機能の加齢変化
活動量の変化
長時間同じ姿勢
筋肉が短縮した肢位
病気
薬剤

など、さまざまな要因を考える必要があります。

だから高齢者から、

「水を飲んでいるのに毎晩つる」

と言われても不思議ではありません。

水分だけが原因ではない可能性があるからです。


「硬い筋肉だからつる」も少し違う

整骨院ではここも重要です。

「ふくらはぎが硬いですね。だからつるんですよ」

と説明したくなりますが、これは少し単純すぎます。

筋けいれんは、単なる筋肉の硬さだけではなく、

神経筋制御
筋疲労
運動負荷
筋肉の長さ
コンディショニング
水分・電解質
疾患・薬剤

などを含めて考える必要があります。

そのため、

硬い → 揉む → 終了

ではなく、

「いつつる?」

「どの筋肉?」

「運動した日?」

「夜だけ?」

「最近運動量が増えた?」

「毎日?」

「左右両方?」

などを確認することが重要です。


筋肉がつったときの対処

運動中などに一般的な筋けいれんが起きた場合は、まず運動を止め、つった筋肉をゆっくり伸ばすのが基本です。急性の運動関連筋けいれんに対する穏やかな静的ストレッチには比較的強い支持があります。

例えばふくらはぎなら、

つま先を身体側へゆっくり起こす

方向です。

強引に引っ張るのではなく、痛みを確認しながらゆっくり行います。

大量に汗をかいた、暑熱環境で長時間運動した、下痢や嘔吐があったなどの場合は、水分・電解質の補給についても考える必要があります。


予防は「水を飲む」だけではない

繰り返す人では、その人がどんな状況でつっているかを見ることが重要です。

運動中なら、

運動強度が急に上がっていないか
練習量が増えていないか
疲労した状態で運動を続けていないか
普段以上の運動をしていないか
水分・電解質摂取に問題がないか

などを確認します。

つまり予防も、

水分+コンディショニング+負荷管理+身体機能

という考え方になります。

運動関連筋けいれんについても、一律に「もっと水を飲む」と指導するより、個人ごとのリスク要因を探して対策することが推奨されています。


繰り返す筋けいれんは「ただのこむら返り」と決めつけない

ここは大切です。

頻繁に繰り返す、今までなかったのに急に増えた、広範囲に起こる、筋力低下・しびれ・感覚異常などを伴う場合には、神経・代謝・循環など別の問題が隠れている可能性があります。

その場合は整骨院だけで判断せず、医療機関で原因を確認することが重要です。


あかつき鍼灸整骨院では

筋肉がつる患者さんでも、単に「つった筋肉をほぐす」だけではなく、

筋肉が硬くなっている部分は緩める

そして、

筋力・持久力など不足している機能には運動療法を行う

というように身体の状態を確認しながら対応します。

特に運動や歩行で繰り返しつる場合は、

その筋肉に負荷が集中していないか

現在の身体能力に対して運動負荷が大きすぎないか

という視点も大切です。


まとめ

筋肉がつることを、

「水分が足りない」

だけで考えないことが重要です。

特に運動関連の筋けいれんでは、

筋疲労

神経筋制御の変化

運動ニューロンの興奮が強くなる

筋肉が強く収縮し続ける

という神経系を含めた仕組みが有力視されています。ただし、すべての筋けいれんを一つの理論で説明できるわけではなく、水分・電解質、運動負荷、筋肉の状態、病気や薬剤なども含めて考える必要があります。

「どこがつるか」だけでなく、「なぜその筋肉が、その状況でつったのか?」を見る。

ここまで考えると、筋けいれんへの理解がかなり深くなります。


FAQ

Q. 足がつるのは水分不足ですか?

水分不足が関係する場合はありますが、それだけが原因とは限りません。特に運動中の筋けいれんでは、筋疲労に伴う神経筋制御の変化も重要と考えられています。

Q. マグネシウムを飲めば予防できますか?

マグネシウム不足がある場合と、一般的な筋けいれんを一律にマグネシウム不足と考えることは別です。原因を確認せずサプリメントだけで対処するのはおすすめできません。

Q. 足がつったらどうすればいい?

一般的な運動関連筋けいれんなら、運動を止め、つった筋肉をゆっくり静的に伸ばします。

Q. 夜中に毎日のようにつります。大丈夫ですか?

頻繁に繰り返す場合や、筋力低下・しびれ・感覚異常などを伴う場合は、医療機関で相談することをおすすめします。