2026.07.22

第2章

パッシブサポートへ移行する姿勢①

頭部前方位(Forward Head Posture)

おそらく臨床で最も多く見る姿勢です。

スマホ首

ストレートネック

とも呼ばれます。

しかし実際には

ストレートネックだから頭が前に出る

のではありません。

逆です。

頭が前へ移動した結果として

頚椎のアライメントが変化します。


なぜ頭は前へ出るのか

まず考えてほしいのは

頭の重さです。

成人では

約4〜6kgあります。

ボウリングの球くらいあります。

通常、

この重さは

頚椎の真上にあります。

すると

モーメントアームは短く、

頚部伸筋は少ない力で済みます。

頭
│
頚椎
│
肩

ところが

頭が3cm前へ出るだけで

モーメントは急激に増えます。

つまり

首の後ろの筋肉は

何倍もの仕事をする必要があります。

ここで疑問が出ます。

じゃあ首の筋肉は毎日そんなに頑張っているの?

答えは

最初だけです。


最初は筋肉で支える

頭が少し前へ出ると

まず働くのは

頚部伸筋群です。

例えば

  • 頭半棘筋
  • 頸半棘筋
  • 頭板状筋
  • 頸板状筋

などです。

これらは

頭が前へ倒れないように

常に収縮します。

つまり

完全な

Active Supportです。

しかし

この状態で

何時間もデスクワークをすると

どうなるでしょう。

当然

疲れます。


脳はもっと楽な方法を探す

すると

少しずつ

頭をさらに前へ出します。

「え?」

と思うかもしれません。

しかし

これは生体力学的には合理的です。

頭を前へ出すと

頚椎下部は屈曲します。

しかし

目線は前を向きたい。

そこで

上位頚椎だけを伸展します。

すると

有名な

Forward Head Posture

になります。

上位頚椎
伸展

↓

下位頚椎
屈曲

なぜこれで筋肉が楽になるのか

ここが重要です。

この姿勢になると

頚部伸筋だけではなく

項靱帯(こうじんたい)

が張ります。

項靱帯は

後頭骨から胸椎まで続く

巨大な靱帯です。

本来は

首が前へ倒れ過ぎないように

ブレーキをかけています。

つまり

筋肉が引っ張っていたものを

今度は

項靱帯が引っ張ります。

すると

頚部伸筋の活動量は減ります。

つまり

Passive Supportへ移行します。


さらに筋膜も参加する

項靱帯は

単独ではありません。

実は

  • 僧帽筋
  • 頭板状筋
  • 菱形筋
  • 胸腰筋膜

とも連続しています。

これが

筋膜ライン

(Superficial Back Line)

として説明されることがあります。

つまり

首だけの問題ではなく

背中全体で

テンションを受け始めます。

そのため

首が悪い人は

背中も硬い。

という患者が非常に多いのです。


「首が硬い」の正体

患者さんは

よく言います。

首がガチガチです。

しかし

ここで考えたいことがあります。

本当に

筋肉は頑張っているのでしょうか?

実は

頚部伸筋の中には

活動が低下している筋もあります。

代わりに

頑張るのは

表層筋です。

例えば

  • 僧帽筋上部
  • 肩甲挙筋
  • 胸鎖乳突筋

などです。

深層筋は働かず

表層筋だけが

過活動になります。

これが

患者さんが感じる

「肩こり」

です。

つまり

硬い筋肉=働きすぎ

ではありません。

深層筋が仕事を放棄し、その代償として表層筋が働き続けている状態なのです。


臨床で重要なポイント

ここで面白いことが起こります。

項靱帯へ依存すると

頭を支えるための筋活動が減ります。

しかし

頭を動かす瞬間には

また筋肉が必要です。

つまり

静止中は

Passive

動き始めは

Active

という切り替えになります。

ところが

長期間続くと

深層筋の反応速度が低下します。

これが

Motor Controlの破綻です。

その結果

  • 首を動かし始めると痛い
  • 朝が一番つらい
  • 振り向く瞬間だけ痛い

という症状につながることがあります。


あかつき鍼灸整骨院の考え方

頭部前方位の方では、僧帽筋や肩甲挙筋が硬くなっていることがよくあります。

しかし、その筋肉だけを緩めても、数日後には元の状態に戻ってしまうケースを多く経験します。

その理由は、本来姿勢を支えるべき深層筋が十分に働かず、項靱帯や表層筋に依存した姿勢が続いているからです。

そのため当院では、

  • 硬くなった表層筋は施術で緩める
  • 深頚屈筋や肩甲帯の安定筋は運動療法で再び働けるようにする
  • 項靱帯へ頼り過ぎない姿勢や身体の使い方を身につける

ことを重視しています。


次回予告

次回はスウェイバック姿勢を取り上げます。

これは私が「パッシブサポートの完成形」と考えている姿勢です。

骨盤・股関節・腰椎・胸郭・膝・足関節がどのように連鎖し、「立っているだけなのに筋肉をほとんど使わない姿勢」が作られるのかを、生体力学的に詳しく解説します。