2026.07.22

第6章

パッシブサポートへ移行する姿勢⑤

足部アーチは「筋肉」で支えているのか?

患者さんに

「土踏まずが落ちていますね。」

と言うと

ほとんどの方は

「筋力が落ちたんですね。」

と答えます。

実は

半分正解で

半分間違いです。

土踏まずは

筋肉だけでは支えられません。

むしろ

靱帯の方が主役です。


人体で最も美しい橋

足には

三つのアーチがあります。

内側縦アーチ

距骨

舟状骨

楔状骨

第一中足骨


外側縦アーチ

立方骨

第五中足骨


横アーチ

第一中足骨

第五中足骨


この構造は

橋に非常によく似ています。

橋は

柱だけでは支えられません。

下から張る

ワイヤーがあります。

足では

そのワイヤーが

靱帯です。


土踏まずを支える本当の主役

代表的なのは

スプリング靱帯

(足底踵舟靱帯)

名前の通り

「バネ」

です。

距骨は

筋肉が直接付着しない

珍しい骨です。

つまり

この骨は

スプリング靱帯の

ハンモックの上へ

乗っています。

これが

土踏まずを作っています。


筋肉は補助

もちろん

筋肉も働きます。

例えば

  • 後脛骨筋
  • 長腓骨筋
  • 前脛骨筋
  • 母趾外転筋
  • 足底の内在筋

しかし

重要なのは

筋肉は補助ということです。

静かに立っているだけなら

靱帯だけでも

かなり支えられます。

つまり

ここでも

Passive Supportです。


では偏平足はなぜ起きるのか

ここが重要です。

よくある説明は

「後脛骨筋が弱い。」

確かに

それもあります。

しかし

それだけなら

筋トレですぐ治るはずです。

実際は

なかなか治りません。

なぜでしょう。

答えは

靱帯が伸び始めているからです。


足にもクリープが起こる

例えば

立ち仕事

8時間。

すると

スプリング靱帯

長足底靱帯

短足底靱帯

足底腱膜

これらは

一日中

引っ張られています。

つまり

クリープが起きます。

少しずつ

アーチは低くなります。


なぜ夕方は足が大きくなるのか

靴屋さんでは

夕方に靴を買いましょう

と言われます。

これは

浮腫だけではありません。

アーチも

少し下がっています。

つまり

足は

長く

広く

なっています。

アーチ高い

夕方

アーチ低い

これは

正常でも起こります。

しかし

毎日

繰り返すと

戻りきらなくなります。


開帳足とは何か

ここで

横アーチです。

多くの教科書では

「横アーチが潰れる」

だけで終わります。

しかし

実際には

もっと面白いことが起きています。

中足骨は

一本一本

少しずつ開きます。

つまり

扇子が開くようになります。

正常

/\

↓

開帳足

\  /

すると

荷重が

第二

第三中足骨へ

集中します。

だから

足裏中央が痛い。

タコができる。

モートン病になる。

この流れになります。


外反母趾は結果である

ここも

誤解が多いです。

親指が曲がるから

外反母趾ではありません。

実際には

横アーチが広がります。

第一中足骨が

内側へ逃げます。

母趾は

外へ引っ張られます。

つまり

親指は

被害者です。

本当に最初に起きているのは

横アーチの崩壊です。


ウィンドラス機構

ここで

足部最大の仕組みが出ます。

Windlass Mechanism

歩く時

親指が反ります。

すると

足底腱膜は巻き取られます。

まるで

井戸のロープを巻く

Windlass(巻き上げ機)

のようです。

すると

土踏まずが

上がります。

つまり

歩く瞬間だけ

足は

硬くなります。

これは

非常に効率の良い

エネルギー保存機構です。


ウィンドラスが壊れると

例えば

外反母趾。

親指が

反りません。

すると

足底腱膜は

巻けません。

つまり

歩いても

アーチが戻りません。

だから

疲れます。

だから

ふくらはぎまで

パンパンになります。


実は「足底筋群を鍛えましょう」だけでは足りない

ここも臨床で重要です。

最近は

「タオルギャザーをしましょう」

「グーチョキパー体操をしましょう」

という指導をよく見かけます。

もちろん

内在筋を活性化することは大切です。

しかし、

もしスプリング靱帯や足底腱膜が長期間のクリープで伸び、さらに足関節や股関節のアライメントも崩れていれば、

筋肉だけを鍛えても、アーチ全体を支えるシステムは十分には回復しません。

つまり、

  • 足部
  • 足関節
  • 下腿
  • 股関節
  • 骨盤

まで含めて荷重のかかり方を変えなければ、本当の意味で「筋肉で支える足」には戻りにくいのです。


臨床で一番興味深い現象

私は長年臨床をしていて、

ある共通点に気付きました。

偏平足の患者さんは

ほぼ例外なく

膝過伸展

があります。

膝過伸展がある人は

スウェイバックも多い。

スウェイバックの人は

頭部前方位もある。

つまり

身体は

部分ではなく

一本の姿勢戦略

として

Passive Supportを選んでいる可能性があります。

私はこれを

Passive Support Chain(パッシブサポートチェーン)

と呼んでいます。

もちろん、これは私自身の臨床的な考え方であり、現時点で確立された学術用語ではありません。

しかし、

頭部から足部までを「どこで筋肉から靱帯・関節包へ荷重を受け渡しているか」という視点で評価すると、多くの患者さんの姿勢や症状を一貫して説明できる場面が少なくありません。


ここからさらに面白くなる

ここまで読むと、

一つ疑問が出てきます。

「じゃあ座っている時はどうなのか?」

実は立位よりも、

座位の方がパッシブサポートへの依存は強くなることがあります。

次章では、

  • 骨盤後傾座位
  • 仙骨座り
  • 猫背座位
  • 長時間デスクワーク

で、椎間板・後方靱帯複合体・胸腰筋膜・頚部支持組織がどのように荷重を受けるのかを詳しく解説します。