鍼灸はなぜ効く?鍼灸の効果とメカニズムを分かりやすく解説
鍼灸による痛みの軽減には、鍼を刺した場所の反応だけでなく、末梢神経・脊髄・脳による「痛みを調節する仕組み」が関係すると考えられています。鍼刺激は感覚神経を通って脊髄や脳へ伝わり、内因性オピオイドなどの鎮痛に関係する物質や、脳から痛みを調節する神経系にも影響します。鍼によって痛みや過剰な筋緊張を軽減し、身体を動かしやすくしたうえで、必要に応じて運動療法を組み合わせることが大切です

「鍼を刺すと、なぜ痛みが楽になるの?」
「鍼をすると血流が良くなるって本当?」
「ツボに刺すから効くの?」
鍼灸を受けたことがない方は、このような疑問を持つと思います。
鍼灸は古くから行われてきた施術ですが、現在では神経・脊髄・脳・血流などにどのような変化が起こるのかという研究も進んでいます。
特に痛みに対する鍼の作用を理解するときに重要なのが、神経の働きです。
鍼を刺すと、その刺激が末梢神経から脊髄、そして脳へ伝わります。
その結果、私たちの身体にもともと備わっている**「痛みを調節する仕組み」**が働きます。
大まかには、
鍼を刺す
↓
皮膚や筋肉、末梢神経が刺激される
↓
刺激が脊髄・脳へ伝わる
↓
痛みを調節する神経の働きが変化する
↓
痛みが軽減し、身体を動かしやすくなる
という流れです。
では、身体の中で何が起きているのか、順番に見ていきましょう。
鍼灸とは?
鍼灸は、
鍼(はり)
と
灸(きゅう)
を使って身体に刺激を加える施術です。
鍼では非常に細い鍼を皮膚や皮下組織、筋肉などへ刺入します。
灸では、もぐさなどを使って温熱刺激を加えます。
鍼灸には「ツボ」や「経絡」といった東洋医学の考え方があります。
現在では、それに加えて、
鍼を刺した場所では何が起こるのか?
神経にはどのような刺激が入るのか?
脊髄や脳はどう反応するのか?
といった現代医学的な研究も行われています。
今回は、この現代医学的な視点から鍼灸の仕組みを説明します。
まず「痛み」が伝わる仕組みを知ろう
鍼の作用を理解するためには、痛みがどのように伝わるのかを知る必要があります。
例えば腰の組織に強い刺激が加わったとします。
その情報は、
腰の組織
↓
末梢神経
↓
脊髄
↓
脳
へ伝わります。
脳がその情報を処理することで、私たちは「腰が痛い」と感じます。
つまり痛みには、痛みを感じている場所だけでなく、神経・脊髄・脳も関係しています。
そして私たちの身体には、
痛みを脳へ伝える仕組み
と、
痛みを調節する仕組み
の両方があります。
鍼の作用を理解するうえで、この「痛みを調節する仕組み」が重要になります。
鍼を刺すと身体では何が起こる?
例えば肩の筋肉に鍼を刺します。
すると鍼による小さな機械的刺激が、
皮膚
皮下組織
筋肉
感覚神経
などに加わります。
そこで生じた刺激は末梢神経を通って、脊髄や脳へ伝わります。
つまり鍼治療では、
鍼を刺した場所で起こる変化
と、
神経を通して脊髄・脳で起こる変化
の両方を考えることができます。
メカニズム① 鍼を刺した場所で反応が起こる
鍼を刺すと、皮膚や筋肉などに小さな機械的刺激が加わります。
その刺激によって局所の組織が反応し、血流や微小循環が変化することが報告されています。
そのため、鍼治療後に、
「肩が温かくなった」
「筋肉が楽になった」
「動かしやすくなった」
と感じる方もいます。
鍼ではまず、このような鍼を刺した場所での反応が起こります。
さらに重要なのが、ここから神経へ刺激が伝わることです。
メカニズム② 末梢神経へ刺激が入る
皮膚や筋肉には、身体に加わった刺激を感じ取る神経があります。
鍼を刺すと、こうした感覚神経が刺激されます。
その刺激は電気的な神経信号となって、
鍼を刺した場所
↓
末梢神経
↓
脊髄
へ伝わっていきます。
つまり鍼は、筋肉への刺激であると同時に、神経への感覚入力でもあります。
ここから鍼による痛みの調節が始まります。
メカニズム③ 脊髄で痛みの情報が調節される
身体から脳へ向かう痛みの情報は、途中で脊髄を通ります。
脊髄は単なる「痛みの通り道」ではありません。
脊髄の中でも、痛みの情報はさまざまな調節を受けています。
鍼による感覚刺激が脊髄へ入ることで、痛みを伝える神経活動に変化が起こる可能性が研究されています。
イメージとしては、
身体から脳へ送られている痛みの情報に対して、鍼による別の感覚刺激を入れる
ということです。
その結果、脳へ伝わる痛みの情報が変化します。
メカニズム④ 脳から痛みを抑える仕組みが働く
私たちの身体には、脳から脊髄へ向かって痛みを調節する仕組みがあります。
これを下行性疼痛調節系と呼びます。
少し難しい言葉ですが、
脳から脊髄へ「痛みの伝わり方を調節する信号」を送るシステム
と考えると分かりやすいです。
痛みの情報は、
身体 → 脊髄 → 脳
という一方通行ではありません。
脳からも、
脳 → 脊髄
へ信号が送られています。
鍼刺激は、このような痛みを調節する神経系にも影響すると考えられています。
つまり鍼による鎮痛には、
身体がもともと持っている「痛みを調節する能力」
が利用されています。
メカニズム⑤ 身体の中の鎮痛物質が関係する
鍼の研究でよく登場するのが、内因性オピオイドです。
代表的なものには、
βエンドルフィン
エンケファリン
ダイノルフィン
などがあります。
難しい名前ですが、簡単にいうと、
人間の身体の中にもともと存在する、痛みの調節に関係する物質
です。
これらの物質が神経系にある受容体へ作用すると、痛みの情報が抑えられます。
鍼刺激による鎮痛にも、この内因性オピオイドを含む複数の神経伝達物質や神経回路が関係すると考えられています。
メカニズム⑥ 脳での「痛みの感じ方」にも影響する
痛みは、単純に身体から送られてきた刺激の強さで決まるものではありません。
例えば同じ腰痛でも、
「また痛くなるのでは?」
という不安が強いときと、
「少しずつ動けるようになってきた」
と安心しているときでは、痛みの感じ方が変わることがあります。
痛みを感じるとき、脳では、
感覚
感情
注意
記憶
などに関係するさまざまな領域が働いています。
鍼刺激によって、こうした痛みの処理に関係する脳の活動やネットワークが変化する可能性も研究されています。
そのため鍼による痛みの変化は、
鍼を刺した場所
↓
末梢神経
↓
脊髄
↓
脳
という広い範囲で考える必要があります。
「鍼で筋肉が緩む」とはどういうこと?
鍼を受けた患者さんから、
「筋肉が柔らかくなった感じがする」
「肩が軽くなった」
と言われることがあります。
これにはいくつかの仕組みが関係します。
まず鍼を刺した場所では、局所の組織や神経に刺激が加わります。
さらに痛みが軽減すると、身体を守るために起こっていた過剰な筋緊張も減りやすくなります。
例えば、
肩が痛い
↓
無意識に肩を守る
↓
首や肩の筋肉に力が入る
↓
筋肉が疲労する
↓
さらに動かしにくくなる
という状態があります。
ここで鍼によって痛みが軽減すると、
痛みが軽減する
↓
身体を守る必要が減る
↓
過剰な筋緊張が減る
↓
肩を動かしやすくなる
という変化が起こることがあります。
そのため当院では、硬くなった筋肉を見つけたときに、
「なぜ、この筋肉が頑張り続けているのか?」
まで考えることを大切にしています。
鍼をしたときの「ズーン」は何?
鍼を受けると、
「ズーン」
「重い」
「奥に響く」
という独特の感覚が出ることがあります。
鍼灸では、このような感覚を「響き」と呼ぶことがあります。
伝統的には**得気(とっき)**という言葉でも表現されます。
鍼によって皮膚や筋肉などの感覚神経が刺激されたときに生じる感覚の一つです。
響きを強く出すことが治療の目的ではありません。
患者さんの症状や身体の状態に合わせて、刺激量を調節します。
鍼は深く刺した方がいい?
鍼は深さを競う治療ではありません。
治療する場所や目的によって、
浅い刺激
深い刺激
鍼を刺してすぐ抜く方法
一定時間置いておく方法
などを使い分けます。
必要な刺激量は患者さんによって違います。
痛みに敏感な方や初めて鍼を受ける方では、弱い刺激から始めることもあります。
電気鍼とは?
刺した鍼に低周波の電気刺激を加える方法があります。
鍼通電療法
電気鍼
などと呼ばれます。
鍼を通して一定のリズムで刺激を加えられるため、神経や筋肉へ規則的な刺激を与えることができます。
電気鍼については、刺激の周波数と内因性オピオイドなどの関係も研究されています。
通常の鍼と電気鍼にはそれぞれ特徴があるため、症状や治療目的に合わせて選択します。
お灸では何が起こる?
お灸では、もぐさなどを使って身体へ温熱刺激を加えます。
皮膚へ温熱刺激が加わると、
皮膚温
局所循環
温度を感知する感覚神経
などに変化が起こります。
そして温熱刺激の情報も、
皮膚
↓
末梢神経
↓
脊髄・脳
へ伝わります。
そのため、お灸も「身体を温める」という作用に加えて、温熱刺激を神経系へ入力する治療として考えることができます。
鍼灸にはどのくらい効果がある?
鍼治療については、世界中で多くの臨床研究が行われています。
特に研究が多いのが痛みに対する鍼治療です。
慢性的な、
腰痛
首の痛み
頭痛
変形性関節症に伴う痛み
などを対象とした研究があります。
慢性痛を対象とした大規模な研究では、鍼治療を受けたグループは、鍼を受けなかったグループと比較して痛みが改善しています。
また、本物の鍼と偽鍼を比較した場合にも平均的な差が認められています。
ただし、本物の鍼と偽鍼との差は、鍼を受けた人と受けなかった人との差より小さくなります。
このことから、実際の治療効果には、
鍼刺激そのものによる身体の反応
治療を受ける環境
安心感
治療への期待
など、複数の要素が関係していると考えられています。
「鍼はプラセボなの?」という疑問
鍼治療の研究では、
本物の鍼
と
偽鍼
を比較する研究があります。
大規模な慢性痛の研究では、本物の鍼の方が偽鍼より平均的に良い結果を示しています。
一方で、鍼の研究には難しい問題があります。
例えば「偽鍼」として皮膚に触れたり、押したり、浅く刺激したりすると、それ自体が感覚神経への刺激になります。
つまり、薬の研究で使われる「何も成分が入っていない偽薬」のような完全な比較対象を作りにくいのです。
そのため鍼の効果は、
鍼そのものによる生理学的作用
と、
治療環境や安心感などによる作用
を合わせて考える必要があります。
鍼で痛みが減った後が大切
ここは、あかつき鍼灸整骨院が特に大切にしている部分です。
例えば肩こりの患者さんで、僧帽筋が非常に硬くなっていたとします。
鍼を行うことで、
痛みが軽減した
肩が軽くなった
動かしやすくなった
という変化が出たとします。
次に考えるのが、
「なぜ僧帽筋がこんなに頑張っていたのか?」
です。
例えば、
長時間のデスクワーク
肩甲骨周囲の筋力低下
胸郭の動きの低下
肩関節の動きの低下
などが関係しているかもしれません。
その場合は、鍼で筋肉を緩めた後に、
動きにくかった部分を動かす
↓
弱く使えていなかった筋肉を運動療法で使う
↓
日常生活で一部の筋肉に負担が集中しにくい身体をつくる
というところまで治療を進めていきます。
あかつき鍼灸整骨院が「鍼+運動療法」を行う理由
痛みが強いと、人は身体を動かさなくなります。
すると、
痛い
↓
動かさない
↓
筋力が低下する
↓
一部の筋肉が代わりに頑張る
↓
その筋肉が硬くなる
↓
さらに身体を動かしにくくなる
という悪循環が起こることがあります。
そこで当院では、
硬く過剰に働いている筋肉
には、鍼や手技などを使って**「緩める」**。
そして、
弱く十分に使えていない筋肉
には、運動療法を行って**「使えるようにする」**。
という考え方で治療を組み立てます。
例えば、
鍼・手技
↓
痛みや筋緊張を軽減
↓
身体を動かしやすくする
↓
運動療法
↓
必要な筋肉を使えるようにする
↓
日常生活で身体を使える状態へ戻していく
という流れです。
鍼は、「痛くて動けない状態」から「身体を動かして改善していける状態」へ進むための治療手段の一つとしても活用できます。
どんな症状に鍼を使う?
鍼治療は、特に痛みに対して多くの研究が行われています。
例えば、
腰痛
首・肩の痛み
筋肉の緊張を伴う痛み
頭痛の一部
変形性関節症に伴う痛み
などで鍼治療が選択肢になる場合があります。
ただし、同じ「腰痛」でも身体の状態は一人ひとり違います。
そのため当院では、
どこが痛いか
だけを見るのではなく、
何をすると痛いのか
どの部分が動きにくいのか
どの筋肉が過剰に働いているのか
どの筋肉が十分使えていないのか
まで評価して、鍼・手技・運動療法などを選択します。
医療機関での検査を優先する症状
痛みの中には、整骨院で施術を始める前に医療機関での検査が必要なものがあります。
例えば、
突然経験したことのない激しい頭痛
胸痛や呼吸困難
急に手足へ力が入らなくなった
ろれつが回らない
顔や手足に突然麻痺が出た
腰痛と一緒に尿が出にくくなった
高熱と強い痛みがある
転倒後から強い痛みが続いている
などです。
このような症状では、原因を確認するために医療機関での評価を優先します。
鍼が身体に作用する流れをまとめると
鍼を刺す。
↓
皮膚・筋肉などへ刺激が加わる。
↓
感覚神経が刺激される。
↓
刺激が末梢神経から脊髄へ伝わる。
↓
脊髄で痛みの情報が調節される。
↓
脳の痛みを調節する仕組みにも影響する。
↓
内因性オピオイドなど、痛みの調節に関係する物質も働く。
↓
痛みや筋緊張が変化する。
↓
身体を動かしやすくなる。
この流れを理解すると、
「鍼は痛いところに針を刺して筋肉をほぐす治療」
というイメージから、
「鍼という刺激を利用して、局所組織と神経系の両方に働きかけ、痛みを調節する治療」
というイメージに変わると思います。
まとめ|鍼で痛みを減らし、動ける身体へ
鍼を刺すと、その場所の組織が刺激されると同時に、感覚神経にも刺激が入ります。
その情報は、
末梢神経
↓
脊髄
↓
脳
へ伝わります。
その過程で、
局所の反応
脊髄での痛みの調節
脳からの痛みを抑える仕組み
内因性オピオイドなどの鎮痛に関係する物質
など、さまざまな仕組みが関係します。
これが現在研究されている、鍼による鎮痛メカニズムの大きな流れです。
そして、痛みが軽減して身体を動かしやすくなったら、次は**「なぜその場所に負担が集中したのか?」**を考えます。
あかつき鍼灸整骨院では、
硬く過剰に働いている筋肉は「緩める」
弱く十分に使えていない筋肉は運動療法で「使えるようにする」
という考え方を大切にしています。
鍼で痛みを軽減する。
↓
身体を動かしやすくする。
↓
運動療法で必要な筋肉を使えるようにする。
↓
日常生活で身体に負担が集中しにくい状態を目指す。
この流れで、症状の改善を目指していきます。
FAQ
Q. 鍼はなぜ痛みに効くのですか?
鍼刺激が感覚神経を通って脊髄や脳へ伝わり、身体にもともと備わっている痛みを調節する仕組みに影響すると考えられています。
Q. 鍼をすると筋肉が緩むのはなぜですか?
鍼を刺した場所の組織や神経への刺激に加えて、痛みが軽減することで身体を守るための過剰な筋緊張が減り、動きやすくなることがあります。
Q. 鍼をしたときの「ズーン」とした感覚は何ですか?
鍼刺激によって皮膚や筋肉などの感覚神経が刺激されたときに生じる感覚の一つです。鍼灸では「響き」と呼ばれることがあります。
Q. 鍼は深く刺した方が効果がありますか?
鍼の深さや刺激量は治療する場所や目的によって変わります。身体の状態に合わせて刺激量を調整します。
Q. 電気鍼と普通の鍼は何が違いますか?
電気鍼は刺した鍼へ低周波の電気刺激を加え、神経や筋肉へ一定のリズムで刺激を与える方法です。
Q. 鍼灸は腰痛や肩こりにも使われますか?
腰痛や首・肩の痛みなど、筋骨格系の痛みに対する鍼治療は多く研究されています。実際には症状や身体の状態を評価して、鍼が適しているかを判断します。




