テニス肘を深く理解する
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は、肘の外側に付着する手首・指を動かす筋肉の腱へ繰り返し負荷がかかることで痛みが生じる代表的な肘の症状です。テニスをしていない人にも起こり、物を握る、持ち上げる、タオルを絞るなどの動作で痛みが出ることがあります。改善には負担となる動作の調整だけでなく、状態に応じて筋肉・腱が必要な負荷に耐えられるよう運動療法を行うことも重要です。

なぜ肘が痛む?どうすれば改善する?
「物を持つと肘が痛い」
「タオルを絞ると痛い」
「ペットボトルのふたを開けると痛い」
「パソコンや家事をしていると肘の外側が痛くなる」
このような症状でよく知られているのがテニス肘です。
名前に「テニス」と付いていますが、テニスをしていない人にも起こります。
テニス肘を改善するために大切なのは、
痛い場所だけを見るのではなく、「なぜそこへ負担が集中したのか?」を考えることです。
1.テニス肘とは?
テニス肘は、一般に上腕骨外側上顆炎と呼ばれます。
最近では、単純な「炎症」だけでは説明できないことから、**外側肘部腱障害(lateral elbow tendinopathy)**などとして考えられることもあります。
痛みが出やすいのは、肘の外側にある外側上顆周辺です。
この部分には、手首や指を動かす筋肉の腱が付着しています。
そのため、
肘が痛い
=
肘を曲げ伸ばししすぎた
とは限りません。
実は手首や指の使い方が深く関係しています。
2.なぜ「手首」を使って肘が痛くなるの?
前腕には、手首や指を動かす筋肉があります。
特にテニス肘では、手首を反らす働きをする筋肉群とその腱が重要です。
筋肉は肘の外側付近から始まり、手首側へ伸びています。
つまり、
物を握る
フライパンを持つ
タオルを絞る
パソコンのマウスを操作する
工具を使う
テニスのラケットを握る
といった動作を繰り返すと、肘の外側に付着する腱にも負荷がかかります。
だから、
「肘が痛いのに、手首を動かすと痛い」
ということが起こるのです。
3.特に関係する「短橈側手根伸筋」
テニス肘では、手首を反らす筋肉の一つである**短橈側手根伸筋(ECRB)**の腱がよく関係します。
例えば物を強く握ってみてください。
握るのは指ですが、同時に手首が安定していなければ力を出しにくくなります。
そこで手首を支える筋肉が働きます。
つまり、
握る動作を繰り返す
↓
手首を安定させる筋肉も繰り返し働く
↓
腱への負荷が繰り返される
↓
肘の外側に痛みが出る
ということがあります。
これが「握ると肘が痛い」理由の一つです。
4.「炎症が起きているだけ」ではない
名前は「上腕骨外側上顆炎」ですが、長く続いているテニス肘では、単純な炎症だけが問題とは限りません。
腱は日常生活や運動によって負荷を受けています。
通常は、
負荷がかかる
↓
身体が適応・修復する
↓
次の負荷に耐えられる
というサイクルを繰り返します。
ところが、
腱が耐えられる負荷
よりも
実際にかかる負荷
が大きい状態が続くと、腱の状態が悪化して痛みにつながることがあります。
大切なのは、
「使ったこと」そのものではなく、「今の組織が耐えられる量を超えて使い続けていること」
です。
5.どうして急に痛くなったの?
患者さんから、
「今まで同じ仕事をしていたのに、なぜ突然痛くなったんですか?」
と聞かれることがあります。
身体が耐えられる負荷は、いつも一定ではありません。
例えば、
- 急に仕事量が増えた
- 重い物を持つことが増えた
- スポーツを再開した
- DIYや庭仕事を長時間した
- パソコン作業が増えた
- 十分な回復時間が取れていない
などが重なると、
身体が耐えられる量 < 実際の負荷
となることがあります。
「特別なケガをした覚えがないのに痛くなった」というケースも珍しくありません。
6.どんな動作で痛みやすい?
代表的なのは、
- ペットボトルのふたを開ける
- コップやフライパンを持つ
- 買い物袋を持つ
- タオルや雑巾を絞る
- ドアノブを回す
- パソコンのマウスを使う
- 草むしりをする
- 工具を使う
- ラケットを振る
などです。
共通しているのは、
「握る」「手首を安定させる」「ひねる」
といった動作です。
7.なぜ握ると痛いの?
握力を発揮するときには、指を曲げる筋肉だけが働くわけではありません。
手首がグラグラしていると、指の筋肉も効率よく力を出しにくくなります。
そこで手首を安定させるために、前腕の筋肉が働きます。
そのため、
握る
↓
前腕の筋肉が働く
↓
肘外側の腱に負荷
↓
痛み
ということがあります。
テニス肘の患者さんで握力を確認するのは、このためです。
8.「使わなければ治る」?
痛みが強い時期に、負担となっている動作を減らすことは重要です。
しかし、
ずっと使わないことが最終的なゴールではありません。
腱や筋肉には、適切な負荷をかけることで、その負荷に耐えられる身体へ戻していくことも必要だからです。
例えば、
痛い
↓
まったく使わない
↓
一時的に楽になる
↓
以前と同じ仕事へ突然戻る
↓
再び大きな負荷
↓
また痛い
ということもあります。
そのため、症状に合わせながら徐々に負荷へ慣らしていくことが重要です。
9.なぜ運動療法をするの?
テニス肘の運動療法には、
前腕の筋肉・腱が負荷に耐えられる能力を高めていく
という大切な目的があります。
ストレッチだけではなく、状態に応じて手首を動かす筋肉などの筋力・持久力を段階的に回復させます。
例えば、
軽い負荷
↓
症状を確認
↓
少しずつ負荷を増やす
↓
仕事・家事・スポーツで必要な負荷へ近づける
という考え方です。
米国整形外科学会(AAOS)でも、テニス肘に対するリハビリテーションとして前腕筋群のストレッチや筋力トレーニングが紹介されています。
10.「痛い筋肉を揉むだけ」では足りない理由
前腕の筋肉がパンパンに張っている患者さんもいます。
そのため筋肉を緩めることで、一時的に楽になる場合があります。
しかし、
なぜその筋肉が繰り返し頑張っていたのか?
を考えることも重要です。
例えば、
仕事で手を使う量が多い
握る力が必要
手首・肘・肩をうまく使えていない
筋肉や腱が現在の仕事量に耐えられていない
などが残ったままなら、また同じ場所へ負担が集中する可能性があります。
そのため、
「硬いところを緩める」+「負荷に耐えられる身体へ戻す」
という両方の考え方が重要になります。
11.肘だけ見ればいい?
腕を使う動作は、肘だけで行っているわけではありません。
例えばテニスでボールを打つときには、
体幹
↓
肩
↓
肘
↓
手首
↓
ラケット
と身体全体で力を伝えています。
仕事や家事でも同じです。
肩や体幹をうまく使えず、手首・前腕ばかりに負担が集中している場合もあります。
だから当院では、
「痛い肘だけ」ではなく、「なぜ肘に負担が集中しているのか?」
まで確認します。
12.ストレッチはした方がいい?
前腕の筋肉の柔軟性が低下している場合には、ストレッチを行うことがあります。
ただし、
強く伸ばせば伸ばすほど良い
わけではありません。
痛みが強い状態で無理に伸ばし続ければ、かえって症状を刺激することがあります。
AAOSでも、テニス肘に対する前腕筋群のストレッチが運動プログラムの一つとして紹介されています。
大切なのは、
現在の状態に合わせて刺激量を調整すること
です。
13.サポーターは使った方がいい?
テニス肘用のバンドや手首の装具などによって、作業中の症状が楽になる人もいます。
ただし、
サポーターを付ければ腱そのものが治る
という意味ではありません。
痛みを減らしながら日常生活を行うための補助として考えます。
14.どのくらいで治る?
テニス肘は、数日で完全に治るとは限りません。
腱は筋肉とは性質が異なり、症状が長引くことがあります。
特に、
痛い
↓
少し休む
↓
良くなる
↓
すぐ以前と同じ負荷へ戻す
↓
また痛くなる
を繰り返していると、長期化することがあります。
AAOSの患者向け運動プログラムでも、上顆炎に対する運動を6〜12週間継続するプログラムが示されています。これは「全員が6〜12週間で治る」という意味ではありませんが、腱の回復では数日単位ではなく、ある程度の期間をかけて負荷へ適応させる考え方が重要です。
15.テニス肘だと思っていたら違うこともある
肘の外側が痛いからといって、すべてがテニス肘とは限りません。
首や神経の問題、肘関節そのものの問題などでも似た症状が出ることがあります。
特に、
- 強いしびれがある
- 手に力が入りにくい
- 首から腕にかけて症状がある
- 転倒や外傷後から強く痛む
- 肘が大きく腫れている
- 赤みや熱感が強い
- 安静にしていても強く痛む
- 症状がどんどん悪化する
などがある場合には、テニス肘と決めつけず医療機関での評価が必要な場合があります。
16.あかつき鍼灸整骨院ではどう考える?
当院では、
「肘が痛いから肘だけを施術する」
とは考えません。
まず、
どの動作で痛い?
↓
仕事・家事・スポーツで何を繰り返している?
↓
前腕のどの筋肉が頑張っている?
↓
手首・肘・肩はきちんと動いている?
↓
どの筋肉が硬くなっている?
↓
どの筋肉が弱く、十分に使えていない?
↓
現在の身体に対して負荷が大きすぎない?
と考えていきます。
そのうえで、
硬く過剰に働いている筋肉は「緩める」
弱く十分に使えていない筋肉には「運動療法」
を行い、肘へ負担が集中しにくい身体を目指します。
テニス肘で一番知ってほしいこと
テニス肘は、
「肘に炎症があるから、痛いところを揉んで休ませれば終わり」
という単純なものではありません。
大切なのは、
どの動作で負担がかかっているのか
なぜ肘の外側へ負担が集中しているのか
現在の筋肉・腱はどの程度の負荷に耐えられるのか
を考えることです。
痛みを減らすだけでなく、
「また使っても痛くなりにくい状態」まで戻していく。
これがテニス肘を改善していくうえで大切な考え方です。
FAQ
Q.テニスをしていなくてもテニス肘になりますか?
はい。テニス肘という名前ですが、テニスをしていない人にも起こります。仕事、家事、パソコン、工具の使用など、手首や指を繰り返し使う動作でも肘外側の腱に負担がかかることがあります。
Q.テニス肘はどこが痛くなりますか?
代表的なのは肘の外側です。物を握る、持ち上げる、タオルを絞る、手首を動かすといった動作で痛みが出ることがあります。
Q.テニス肘は揉めば治りますか?
前腕の筋肉が過剰に緊張している場合、筋肉を緩めることで症状が軽くなることはあります。しかし、仕事量や身体の使い方、筋力など、肘へ負担が集中している原因が残っている場合は、それらも含めて考えることが大切です。
Q.テニス肘はストレッチした方がいいですか?
筋肉の柔軟性が低下している場合には行うことがあります。ただし、強い痛みを我慢して伸ばす必要はありません。症状に合わせて負荷を調整することが重要です。
Q.テニス肘には運動療法が必要ですか?
状態に応じて筋力トレーニングなどを行います。目的は単に筋肉を強くすることではなく、仕事・家事・スポーツなどで必要な負荷に筋肉や腱が徐々に耐えられる状態を目指すことです。
Q.肘の外側が痛ければテニス肘ですか?
必ずしもそうではありません。首や神経、肘関節そのものの問題などでも似た症状が出ることがあります。しびれ、強い筋力低下、腫れ、外傷後の強い痛みなどがある場合は医療機関での評価が必要なことがあります。
あかつき鍼灸整骨院
埼玉県越谷市赤山町1-163
TEL:048-947-7718
公式LINEからもご相談いただけます。




